みんな、ときどきひとり
「先輩は、そうやってすぐ泣く」
馬鹿にしたように笑いながら優しく拭う、彼の指。
「うんうん」
すぐ、泣くよ。
わたしは自分が思うより泣き虫だった。
水城くんと出逢ってそう思った。
だって、君の前で何度泣いただろう。
だけど、嬉しくて涙がでることなんてなかった。
喜びが涙に変わるなんて君が、今教えてくれたんだよ。
「もう一回、言ってよ」
涙声で、彼に言う。
「いや、もう一回は勘弁して下さい」
「ひどい。一度振ったくせに」
恨めしそうな目で訴える。
「手嶋とできてるくせに」
「ななな、なにそれ?」
「先輩だって、デートしてたじゃないですか」
「2人で遊んだけど、ちゃんと断ったよ!」
「2人は付き合ってるって、2年の間で噂ですけど」
今度は、疑わしい目でわたしを睨んだ。