みんな、ときどきひとり

なんでこのタイミングで疑うわけ?

後ろめたいこともないのに、頭がパニックになる。

なにから説明すれば、いいのかって。

「んなわけないでしょーが!わたしは水城くんが」

抗議をしようとした口が、何も言えなくなってしまった。

だって、彼の唇が重なったんだ。

優しく触れて、離れたあと、わたしの顔を見て笑った。

「ここで、キスする?」

驚きのあまり涙がとまった。

「やきもち」

「やいてくれたの?」

「嘘です」

「すぐ、嘘つく」

また性懲りもなくと、軽く睨んだ。

「いや、本当かも」

うん。そうだね、水城くんはすぐ嘘をつくんだ。

それは、きっと、自分の気持ちを伝えるのが下手な君の表現方法なのかもしれない。

今なら、それがわかる気もするよ。
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