みんな、ときどきひとり

そっと、手を差し伸べて彼の手に繋ぐ。

「わたしも、好きだよ」

そう言うと、彼が目を逸らした。

「ていうか、暗闇でわからないと思いますけど、俺、今すげえ顔赤い」

顔を右手で軽く押さえて、下を向く。

暗い街灯でも、照れているのがわかった。

その仕草が、今まで見たことのない水城くんで。

可愛くて、またわたしをドキドキさせる。

きっと、わたしの知らない彼がたくさんいる。

過去も、今も、これからも。

それでも、胸は震えて、彼に近付きたくなる。

ゆっくりでいいから、彼の話を訊こう。

わたしの見たことのない君の話を。

すごく楽しい時間になるだろう。

それでも、きっと、理解出来るとは簡単に言えるわけないけど。

それでも、一緒にいたいと言えるよ。

だから。

< 345 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop