みんな、ときどきひとり

出かけ間際に、ダイニングに行くと、母が、ホットケーキを食べていた。

母は、あれから何も変わらずに、弟を可愛がって生きている。

別に、母を変えたいとか、そんなことは思ってもいないけど。

なにかを求めるのはもうやめた。

人は簡単には、変わらないと思う。

「おいしいわね、これ」

ぽつりと母が、こぼした。

「粉混ぜて、焼いただけ」

「そうね」

だから、また苦しくなることもあるかもしれない。

そういうときは深呼吸する。

わたしを意識してみる。

大好きなことを考える。

なにが正しいかわからないけど。

ううん。

そもそも正しいなんて必要ない。

それは苦しさしか生まない気がするから。

< 350 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop