みんな、ときどきひとり
「それでさ。彼氏、来週誕生日なんだよね」
梨花が嬉しそうな顔で言う。あのときと同じような表情で。
「えー。急すぎ。なんかするの?」
「どうしよっかなぁ。とりあえず、ケーキ焼こうと思うんだけど。簡単なのないかな。あまり得意じゃないからさ」
「あっ。わたし、家にレシピ本あるよ」
昔焼いた簡単なケーキのレシピが、家にあった気がする。
「本当?貸してほしい!」
「じゃあ、家帰ったら探してみるね」
「うん」と梨花はまた微笑んだ。
そうだよね。
梨花は今、幸せなんだよね。
なら、わたしも嬉しく思わないといけないのにね。
どうしてこんな風に思ってしまうのだろう。