みんな、ときどきひとり
職員室から階段まで駆け降りると、「あの……痛いんですけど。腕」と彼は言った。
「あっ、ごめん」
掴んでいた腕を離す。
「よく覚えてましたね」
「へ?」
「そんなに慌てなくてもいいですよ。言わないし」
わたしの動揺が見透かされてたみたいで、恥ずかしくなる。
「そっ……そうだよね。ごめんね」
思わずへらっと笑ってごまかした。
また彼の顔をじっと見る。
あの日はキツネみたいな顔に見えたけど、全然、綺麗な顔をしてるな。酔っ払いの視力なんてあてにならないものかもしれない。
「えっと。同じ学校だったんですね?」
混乱する頭を整理する為に確認したけど、白いシャツに濃紺を基調としたチェックのパンツ姿。どう見てもうちの学校の制服だった。
「みたいですね」
「なん組なの?」
「2組ですけど」
「2組って女クラじゃん。わたしも2組だよ?」
「2年2組ですけど」
あっ、2年生か。大人っぽい。