みんな、ときどきひとり

「勝手にタメだと思っちゃった」

「突っ走るタイプですね」

失礼な言い草にムッとしたけど、当たっているから言い返せない。

最初に会ったときは優しい人だと思ったのに、なんか感じ悪すぎ。

お互い口を開くこともなく、下駄箱へと向かった。

ローファーに履き替えると、同じタイミングで校舎を出てしまう。自然と駅までの道を一緒に帰ることになってしまった。

「……あの」

「はい」

「あのときは、ありがとうございました」

感じが悪くても、介抱されたことに変わりはないと自分に言い聞かせてお礼を言った。

「別に」と素っ気なく言うと、またぷつりと会話の糸が切れて無言になる。

なんだか話しにくい人。

「あ。ていうか、あのとき本当にごめんね。怒ってたよね?」

「怒ってたら、シカトしてますよ」

確かに容赦なく放置しそうだ。

「こういう顔なんです」

ぷっと、思わず吹き出してしまった。
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