みんな、ときどきひとり
「あ。そうだ。あの服、駄目にしちゃったから、弁償させてほしいな」
きっと捨ててしまったんだろうな。わたしなら、着たくないもん。お気に入りのものではないことだけを祈るけど。
「もういいですよ。その話は」
「よくないよ。迷惑かけちゃったし」
「別に迷惑じゃないし。彼氏に心配されるんじゃないですか?そんなことしたら」
彼氏?
「えっと、いないけど?」
彼氏は禁句だよ。彼氏がいて当たり前じゃないんだから。心の中はブーイングの嵐だ。
「この前いた人、違うんですか?」
カラオケにいた梨花の好きだった彼のことを思い出した。
「ああ。違うよ。一緒にいた子の友達だよ」
「友達、ですか?」
「どうしたの?」
急に表情が重くなった。