みんな、ときどきひとり
「そんな関係でよくあんなに酔えますね」
軽蔑するような目でわたしを見て言った。
その言葉に反応して、耳たぶが熱を持つのがわかる。
「あ、あんなに酔っ払うつもりなかったよ」
ムキになって言い返す。
「まあ、どっちでもいいですけど」
そんなわたしとは対象的に、彼は冷ややかなままだった。
その足はわたしの歩調に合わせることなく先へと進む。
確かに、酔っ払ったのはわたしが悪いけど。
確かに、みんなに迷惑をかけてしまったけど。
そんな風に言わなくてもいいじゃん。
優しい人だとあの夜、思ったけれど、キツネにつままれた気分になった。
やっぱり、酔っ払いの目はあてにならない。
目の前にいるのは、ただのキツネ男だ。
綺麗な顔をしてるとか、関係ない。
だんだんと、腹がたってきた。
こんな人に恩を着せられたままいるのも釈だ。
「とりあえず、今度弁償させていただきますからね!」
そのイライラを言葉に変えようとしたけれど、思いつきもせず、負け犬の遠吠えにもならなかった。
普段からもっと悪口の練習でもしておけば良かった。
こんなことがあるなら。
すごい悔しい。
ただ先を歩く冷たい後ろ姿にをじっと睨み付けた。
一度も振り向かず、声が届いたのかさえわからないけれど。