みんな、ときどきひとり
手紙と彼の名前

翌日、朝、起きると母がキッチンに立っていた。

「おはよう」

「あら、おはよう」

弟の大(ダイ)の姿が見えない。きっとまだ起きていないんだろう。また目覚まし時計だけ鳴らして結局、寝坊するんだろうな。

母が手際よく朝食のトーストやハムエッグをダイニングテーブルに置いて言った。

「最近、大、変なことしてない?」

「変なこと?」

「変な電話とかしてない?」

隣の部屋だし、電話の話し声は聞こえてくるときはあるけど内容まではっきりとは聞いたこともない。

「わかんない」

「そう。役たたないわね」

中学校に入ってから、大は少し変わった。

髪も似合わないオレンジ系の茶色い髪に染めたし、たまに部屋からタバコの臭いがする。あまりいい方向に向かってないとは、姉のわたしでも気づいている。

だからきっと、気になって仕方ないんだろう。大好きな大が、どんな人達と付き合っているのか。

わたしはそこまで大を知らなかった。だけど、それだけでわたしは役にたたないのだろうか。

トーストをかじって、飲み込む。言葉と一緒に。

小さいときからずっとそうだ。思ったことはなかなか言えない。
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