みんな、ときどきひとり
学校に着いて、自分の席に座った。ポケットに入れておいた鏡を取り出そうとすると、カサカサとした紙の感触が手に伝わった。昨日拾った手紙だった。
「あっ……忘れてた」
「なに忘れてたの?」
梨花がひょこりと後ろから顔を出す。
「あっ、おはよう。昨日、こんな手紙拾っちゃったんだけどさ」
「手紙?」と言って、梨花がわたしの手にあった手紙を奪い取り、まじまじと見た。
「誰これ?」
「知らない」
「どこで拾ったの?」
「職員室の前なんだよね」
「職員室……でも、こんな先生いないよね?」
「いないから、たぶん生徒だと思うけど、こんな名前の子、3年にいたっけ?」
「聞いたことないね」
「どうしよう。見なかったことにして、捨てたら……ダメだよねー。どうしよう」
「うん。捨てたら、この子の気持ちは相手に伝わらなくて、振られたと勘違いして……ややこしいことになっちゃうのが想像ついちゃうよ。じゃあさ、あけてみちゃう?ヒントがあるかもよ?」と梨花の目が輝く。親切心というより、中身に興味深々という顔だ。
「おはよ」
美和子が眠そうな顔で、声をかける。手紙をじっと見つめるわたしたちが不思議なのか「なにしたの?」と言った。