みんな、ときどきひとり
小さな花屋には女性の店員が一人、レジで作業していた。
ピンクの紫陽花を手にとって眺めてみる。紫陽花ってなんか好き。雨に打たれる姿に強さを感じるからかもしれない。
「先輩。もう決まったみたいで今ラッピングしてもらってますよ」キツネ男が後ろから声をかけてきた。
「えっ?早くない?」
「店員に勧められるがままでしたよ。即答。あいつ、単純だから」
「それっぽい。わたし来なくても良かったよね。振り回された感じ」と、笑ってみた。
「まあ。悪い奴じゃないんですけどね」
「うん」
タローくんを庇うような言葉がちょっと意外に思えた。さっきまであきれ顔で彼を見ていたから。
「それ買うんですか?」
わたしの持っている紫陽花を見る。
「これ?今日は買わないけど。来週、母の日だなと思って見てたの」
「ああ。そんな日ありますね」
興味がないのか、表情も変えない。
「そっか。男の子ってあんまりあげたりしないよね?」
「俺はあげたことないです」と、素っ気なく言った。