みんな、ときどきひとり

「なに探しているんですか?」

慌てているわたしを不審そうな表情で見つめている。

「この前、手紙拾ったの。職員室の前で。水城くん宛の」

頬がピクリと強ばる。やっぱり心当たりがあるみたいだ。

「ラブレター?」とわたしがニンマリ笑ってみせても、「さあ。読んでないし、わからないです」と無表情のままだった。からかい甲斐がない。

「ごめん……その手紙なくしたみたい」

隅々まで探したのに、見当たらない。気まずさに顔を上げれなくなる。

呼びとめずに知らない振りをしとけば良かった。

だけど「そうですか」と言うと、さっきと変わりない足取りで、わたしの横を通って行った。

怒っていないのか。でも、人から貰った手紙を落として平然としてられるのも、すごい。冷たいというか、なんというか。

「そう言えば」と、振り返りわたしに言う。

「昨日の放課後、下駄箱に先輩の写真が落ちてましたよ」

「えっ?」

「先輩の写真」

「はっ?ど……どんな写真?ひ……拾ってくれたよね?」

「男と写ってましたけど。拾いませんよ」と言うとまた向きを変えて去って行った。

はっ?と、呆気にとられてしまった。

なにそれ。すごい性格悪い。拾ってくれたっていいじゃないか。わたしの顔を知ってるくせに。

あんなになって手紙渡そうとして探したのに。

なんてわたしとは、対照的なんだろう。

ていうか、男?このわたしが男と2人で写真?

思い当たるのは、ひとつだけだった。
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