みんな、ときどきひとり
タローくん大丈夫かな。ちょっと間抜けな感じがして笑えるけど。
そこで手紙を探していたことを思い出した。どこに閉まったっけと思いながら、机の引き出しを開けると見つけた。
「こんなところにいれたのか、わたし」思わず呟く。
ガシャンとガラスのような物が割れる音がした。続いて「うるせぇな!」と大の罵声が響いた。
突然のことで、心臓が体を突き破るかと思った。少しして、玄関のドアが閉まる音がして、すぐに静まりかえった。
「お母さん?」
階段を駆け下りて、リビングに行くと、呆然と立ち尽くす母の姿があった。
床に散乱しているのは、わたしがあげたピンクのカーネーションと割れた鉢。
「これ、投げつけてきたの?怪我ない?」
そこで我にかえったのか、一瞬身体をびくつかせた後、わたしの顔を見て笑顔をつくった。
「大丈夫よ」
「ありえないんだけど、あいつ」
「でもお母さんが悪いのよ。帰りが遅いとか、口出しすぎたみたい」
「はあ?そんなの、あいつが注意されて当り前じゃん」
そんなことで物を投げつけるなんて。大の身勝手な態度に、怒りがこみ上げてきた。拳に自然と力が入る。
「いいのよ、別に。そんなに怒らないであげて」
「怒らないであげてって。怒ってあげないとダメじゃん」
さっきまで笑顔の母が一瞬にして厳しい顔つきに変わった。
「あなたには関係ないから」
その一言に、わたしは口をつぐんだ。