みんな、ときどきひとり
「誰かの為を思って、お菓子を作ったり。人のプレゼント探しに付き合ってあげたり。優しい人ですよ」
それを水城くんが言ったことに気づいて、顔を上げると彼がいつの間にか、わたしを見つめていた。
だけど優しい人と言われ、また動けなくなる。そして、また母の顔がよぎる。
わたしは、優しくなんかない。
だって、自分の為にやったことだ。母の笑顔が見たかったんじゃない。わたしが、安心したかっただけなんだから。
さっき、水城くんがケーキを食べて誉めてくれたように、ただ「おいしい」とか「ありがとう」と言われて、わたしの存在を肯定したかっただけなんだから。
優しくなんかないんだ。そんなの知ってる。
きっと、そう言ってくれる彼が優しいんだ。
なぜか自然とそう思えた。
冷たいはずなのに。
今だけは、疑うことなくそう思えた。
自分という人間が、恥ずかしくなってしまったせいかもしれない。