みんな、ときどきひとり
「あっ。ねえねえ。ここの観覧車のてっぺんで目を閉じて願い言を3回唱えたら叶うってジンクスあったよね?」
わたしが小さい頃に流行っていたジンクスをふと思い出して話しを切り替えた。
「ありましたね、そんなの」
ゴンドラはゆっくりと動きながら頂上にたどり着くところだった。
「懐かしいね。水城くんもやった?」
「やった気もしますけど」
「うっそ。意外。何お願いごとしたとか覚えてる?」
「そんな昔のこと、忘れましたよ」
「そ、そうだよね。じゃあさ、今から、やってみない?」
わたしは目を閉じて心の中で唱えた。
ほんの数秒だけ静寂した空気が流れ、ガタッと風でゴンドラが揺れた音だけがした。