幸せって、なに
目の前にいるお母さんは意識はないが、
色んな装置のチューブにつながれ呼吸をしている。

確かに生きている。

呼びかけても、手や体に触れても何の反応もないが
確かに生きている。

美沙希はずっと泣き続けていた。

体の中にこんなにも涙になる成分があるのかと思う位
いくらでも涙があふれてきて止まらなかった。

父も泣いていた。

救急車に乗り込んで
傷ついている母の左手を支え、
名前を呼び続けている間や
治療を待ち医者の診断を聞いている間は気丈だったが、

意識がなくただベッドに横たわっている姿を見て、
悲しさのあまり目に涙を滲ませていた。
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