幸せって、なに
美世子のところへ帰りたかったが
そんな身勝手が許されるはずもないと諦め、
会社の社員用アパートに住んで、
酒浸りの生活も女も断って
美世子と美沙希を思いながら真面目に暮らした。

それから一ヶ月後、
突然転勤の辞令が降り、
片田舎での倉庫番の仕事に回された。

それはまさしく左遷に等しく、
会社に抗議したが話すら聞いてもらえなかった。


 長い沈黙のあと美沙希はポツリと言った。

「どうして自殺図ったんだろう。」

回想から醒め、
その言葉を聞いた父は立ちあがり二階に行った。
寝室のドアを開ける音がして、
しばらくするとけたたましく降りて来た。
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