幸せって、なに
「あれっ、今朝のハムエッグ、
ハム入れ忘れたでしょ!」
「普通に目玉焼きを焼いただけよ。」
「あらそうでしたか。」

何だかおかしくて、
ふたりは顔を見合わせて笑った。

そんな会話が交わされたのは
美沙希が中学三年生になったばかりの頃。
受験を控え神経がピリピリする事もあったが
母との暮らしに不満はなかった。


 父は美沙希が三歳の誕生日を迎える前に
家を出てしまってそれっきりだったので
父の事は何も知らないに等しかった。

だが、残っている写真は、
母と仲良さそうにしているもの、
美沙希に顔をくっつけたり
笑顔で抱っこしているもので

愛されていたんだなと思えるから、
余計に父の行動が不可解だった。
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