幸せって、なに
「スーパーに行ったらね、
ちょうどタイムサービスが始まったところで、
牛肉が全て半額になったの。
これは買うしかないと思って
すき焼きになった訳。」

煮えた肉を生卵につけて口に入れながら
笑顔で母は言った。

「そう。」
煮えた白菜を直接口に入れながら
表情も変えずに美沙希は言った。

「卵つけないの?」
「えっ?あ、つけないのもいいかなと思って。」
笑ってごまかした。
「美沙希変よ、どうしたの?何があったの?」

美沙希は何度も喉まで出かかった言葉を飲み込み、
まるでそれをおかずにするように
ご飯ばかりを噛んでは口に入れていた。
< 72 / 203 >

この作品をシェア

pagetop