それでも君が必要だ
「はいっ!俺の電話番号とアドレス、入れておいたから。画面もすぐ電話できるようにしてあるからこのままでね」
「え?」
スッと差し出されたスマホを受け取り画面を見つめる。
速い!ちゃんと入力されてる!もう登録したの?
入力にちまちまと時間のかかる私と智史さんとでは次元が違うのですね。
それに。
何かあったら飛んでいくから、なんて。
そんな言葉はとても嬉しいけれど……。
じっとスマホを見つめたまま考える。
何かあったとしても呼び出すなんて現実的にはできないと思う。
だって、父と智史さんを対峙させるなんて、そんな状況にはしたくないし、想像もしたくない。
だから智史さんを呼び出すことは絶対にない。
でも、大丈夫。
不思議と大丈夫な気がする。
うまく切り抜けられる。
なんとかなる。
そんな気がする。
だから私、がんばってみます。
「じゃあ」
「いや……」
私が動こうとして言葉を発した瞬間、智史さんの言葉が重なった。
「?」
「……やっぱりダメ」
智史さんは真剣な表情でそうつぶやくと、突然車から降りてしまった。
そして智史さんを目で追う私を気にすることなく助手席まで来て扉を開けると、私の手を握った。
「一緒に行こう」
「えっ?いえ……でも、大丈夫ですよ?」
何の根拠もなけれど、私、自信があったのに。
信用されていないのかな?
それは……そうかもしれないけれど。
「やっぱりダメだ。やっぱり心配」
私ではお役に立てない?
そう、ですよね。
私なんて……。
「ごめんなさい。私なんて信用できないですよね……」
「そうじゃないよ!」
声のトーンが違ったからふと見上げると、智史さんは目を細めて少し怒った顔をした。