それでも君が必要だ
「すみません、せっかくいただいたのに」
私が謝ると、智史さんは優しいような切ないような、不思議な表情をした。
「いや……、俺のあげた物を『お守り』だなんて言われたから、ちょっと痺れただけ」
「?」
「いつまでもバッグに中に入れてたら、とけちゃうよ?キャラメルなんていくらでもあげるのに」
「……でも、これは特別だから」
「そう?」
「はい」
「じゃあ、うちの工場にたくさんキャラメルあるから、それを一緒に食べようか?」
私がうなずくと智史さんは微笑んで、またデザートを食べ始めた。
そうしてデザートもなんとか全て食べ終わり、お皿が上の食事が何事もなく綺麗になくなったのを見て、思わず安堵のため息をついた。
「ごちそうさまでした」
私が頭を下げると、智史さんはにっこり笑った。
「美和さん。わかったよ」
「?」
「違和感の原因」
「……」
またそれですか?
私が気持ち悪い原因がわかったところで何もいいことはないのに。
「君は何を食べても俺と同じタイミングで食べ終わるようにしていたよね?」
「はい」
「どうして?」
どうしてって……。
「いつもそうだから、です。変……ですか?」
智史さんは大きくうなずいた。
「うん、変だよ」
爽やかにハッキリと「変」と言われて落ち込む。
つまり、変だから私は気持ち悪いのかな……。
「いつもそうって、家でってこと?」
「……はい」
「お父さんと一緒にご飯を食べる時?」
「はい」
「お父さんがそうしろって言うの?」
「はい……、同時に終わらないと、いけないから……」
父のことを話すこと自体に引け目を感じつつ、小さな声で答えた。