それでも君が必要だ
でも、残念ながら間違ってはいない。
そう思ったら、ただでさえ落ち込んでいたのにもっともっと心がしぼんで小さくなるのを感じた。
私は父の紹介で今年の四月からスイ技研の子会社、スイ電機で働いている。
周りが就職活動を始めた頃、私が「働きたい」と言うと父に一蹴された。
「お前みたいな役立たずが働くなどありえん。家で家事でもやってろ」
父にそう言われても、私は珍しく諦めることができなかった。
だって、あの家にずっといるなんて……。
そんなの息が詰まって耐えられない。
あの家にいたら、父の生活のためだけに存在する家政婦ロボットにされてしまう。
……今もう既にそうだけど。
「こんな役立たずの娘、貰っていただけるだけでもありがたい話ですよ」
父の大きな声にハッとした。
バカにしたように笑う父に柴田専務も大きく相槌を打ちながら「ご謙遜を」と言って笑った。
本当なら、ここで私も合わせて笑わないと父に怒鳴られる。でも、一緒になって笑う気持ちになんてなれなかった。
自分を蔑まれたのにそれを自分で笑うなんて。
父の機嫌を損ねたら、後で酷い目に遭う。
でも、それでもかまわない。
それより今笑う方が苦痛。
案の定、笑わない私に気がついた父がギロリと睨んだ。
「なんだ、その顔は!」
「すみません」
私が小さな声で答えてうつむいたから、父の怒りがぐわっと膨らんだ。
ああ……もう今日は覚悟しないといけない。
蔑まれたことなんて何も考えずに流して、父の思い通りにそつなく過ごせば良かった。
そう思って目を閉じた時、正面で副社長さんが大きく息を吸った。
「栗原部長。このような場を設けていただいて大変申し上げにくいのですが……」
「なんだね?急に」
威圧的な父を恐れる様子もなく、副社長さんはまっすぐに父を見つめた。
「本日は、この縁談をお断りさせていただくために参りました」
「……」
……えっ?
驚いて息もできず大きく目を見開く。