美人はツラいよ
番外編 小悪魔もツラいよ
「えっ!?美姫ちゃん、気は確か?」
話を聞くなり、驚きのあまり飲もうとして傾けたグラスに入っていた水を全てこぼしたのは、同じ課の先輩、萱島…いや、先週からは、松田千景さんだ。
「ちょっと、千景さん、何やってるんですか!!」
「私のことはどーでもいいからっ!」
「どーでもよくないです、早く服、拭いて下さいっ。ほら、おしぼり!」
放心状態の千景さんの代わりに、店員から受け取った追加のおしぼりで、千景さんの服とテーブルを拭く。
全て片づけ終わった後も、千景さんは、まだ口をあんぐりと開けていた。
「とにかく、そういうことなので、よろしくお願いします。」
「いやいやいや…ちょっと待って!どうして、そうなった?!」
報告を終えて、残りの時間は楽しく二人でランチを楽しもうと思っていたのに、このお節介な先輩は許してくれなかった。
「まあ、成り行きでといいますか…」
「成り行き!?それは、もう一度考え直した方がいいんじゃない?」
「いや、正直もうそういう段階では…」
「えっ、どういう段階なの?」
「お互いの両親揃って顔合わせして、式場も予約済みです。」
「い、い、いつの間に!?一ヶ月前まで合コン行くって言ってなかった?」
「ええ、合コン行きましたよ。」
「じゃあ、なぜ、そうなる!?」
「この一ヶ月で、急展開がありまして…」
「だめよ!だめ!!そんな急いで重大なことを決めちゃ駄目!」
「そんなこと、言われましても…」
「美姫ちゃん、もっと慎重に決めるべきよ!惹かれあって、つきあい始めて、月日を重ねて、そして、この人となら何があっても大丈夫って思えるようになってからするものなのよ、
……………結婚は!!」
そうなのだ、この私、杉浦美姫が、先輩の千景さんをランチに誘って、会社近くのカフェで報告した内容とは…
私の結婚及び寿退社について
なのである。