黒猫とさよならの旅
小学生の頃、いつも一緒にいたのは、美和子だった。
大きくはないけれど、くりっとした可愛らしい目元に、長いまつげ。いつもにこにこしていて、いつも髪の毛をちょっと内巻きにいていた。
いや、内巻きにしていたのは高校からだったっけ。
ああ、そうだ。美和子は高校も一緒だった。
小学校から高校までずっと一緒に登下校をしていた。
いつだって笑ってて、そばにいるだけで勇気が湧いてくるような元気さがあった。たくさんの友達に囲まれている彼女の、一番の友人であることが、私にとっても自慢だった。
真面目で、誰よりも一生懸命で、バレー部の県大会で準優勝したとき、彼女は二年でただひとりのレギュラーメンバーに選ばれていたっけ。
誰よりも高く飛び、誰よりもコートの中で必死にボールを追いかけて、汗を流して声をあげていた。
『来年は一緒に優勝しようね!』
負けたあと、涙を堪えながら私にそう言った。
『頑張ろうね!』
その言葉の通り、美和子は頑張っていた。
自分に目標を掲げ、それを叫び、有言実行できる強さを持ち合わせていた。遅くまで部活に励み、それを苦とも思わないで笑っていられる人。
恋も、友情も、部活も、いつも全力だったし、いつもそれを手に入れることのできる魅力と才能があったんだ。美和子と一緒に毎日のように残ってバレーの練習をしても、補欠にすら選ばれなかった私とは違って——。
美和子のことだから、私が学校に来ないこと、心配しているだろうなあ。小学校のころ、私が二、三日学校を休んだときも、毎日心配して家に来てくれたっけ。
「ちょっといいか?」
ぼんやりと美和子のことを懐かしく思いながら歩いていると、前にいた壱くんが立ち止まって私を振り返った。そばにはバス停があって、いつの間にか坂道も終わっている。
「ここ寄っていいか?」
そう言って、バス停の向かいにある高いフェンスに視線を動かした。その先にはグラウンドが広がっている。フェンスが高いのはボールが道路に飛び出さないためのものだろう。
壱くんが自転車のスタンドを立ててグラウンドの方に向かったのを見て、私も慌てて隣に自転車を止めた。その間、黒猫もそわそわと狭いかごの中を動き回っていて、抱きかかえるとすぐに飛び降りて壱くんを追いかける。