エリート同期は意地悪がお好き
敷島亭につき、指定の部屋に入るが、まだ先方は来ておらず、俺は一人その時を待った。

『お客様がおいでになりました』

襖の向こうからの声に、はいとだけ返事をすると、静かに襖が開けられた。

…、思わず絶句する。

新規の取引先の接待なんかじゃなかった。

「待たせたね、東城君」
「…佐々木専務」

…俺の仕事ぶりに感心し、目にかけてくれている佐々木専務ではあるが、今回に限ってはいただけない。

…佐々木専務の後ろには、専務秘書の佐々木希、専務の娘もいた。

「…取引先の接待と聞いて参りましたが、そうでないのなら、私に用はありませんので、失礼します」

にこやかにそう告げた俺は、二人の横を通り過ぎる。

「待て、東城君」
「…このような手を使う専務を、心底軽蔑します」

真顔でそう告げると、専務は怪訝な顔をした。

「…上司に対して、そんな口の利き方をしてもいいと思ってるのか?」

「私の上司は、営業部長ですが?」

悪びれもなくそう答える。

「…貴様、クビになりたいのか?」

流石の専務も怒りを露わにする。



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