エリート同期は意地悪がお好き
驚きとショックで視界が歪む。…こんなところで泣いてたまるか!

なんて、小さなプライドを崩れないように奮い立たせる。

「…斎藤さん」

黒川部長が心配そうな面持ちで、私の名を呼び、触れようとした。

「触らないで!…帰ります」

そう言って、口をグッと閉じると、踵を返して入り口に向かう。

「待って、斎藤さん」
「…あれを見せるために、私をここに連れてきたんですか?」

「違う!」
「…もう、私には金輪際関わらないで下さい。もう、疲れました」

「…」

司が好きなのは私だけ。

…そうだよね、司。

ポロポロと涙が溢れる。

あんなところを見るのは、死ぬ程辛い。

私はたまたま通りかかったタクシーに乗って、その場を後にした。
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