エリート同期は意地悪がお好き
「俺からしたキスじゃなくても、キスはキスだ。朱莉を傷つけたのは分かってる」
「・・・」

「ゴメンな…」
「…佐々木さんと結婚するの?」

・・・あ~、何を聞いているのか。惨めな想いはしたくないのに。

「それ本気で言ってる?」
「・・・」

「俺、朱莉と婚約したつもりなんだけど、嘘だと思ってたのか?」
「そんな事!・・・そんな事、思ってない」

…思ってるわけない。

サプライズの誕生日会。婚約指輪。必ず結婚しようって言ってくれたプロポーズ。あれが嘘だったなんて、思えるわけがない。

「…三十路まで、まだ4年もあるって言うのに」
「・・・え?」

司は溜息をつきながら言っている。

こんな時に、三十路まで4年?何が言いたいの?

「まだまだ、朱莉と楽しい恋人の時間を謳歌できるって言うのに」
「…さっきから、言ってる意味が分からないんだけど」

「…ん?…あ~こっちの話し」
「・・・なんなのよ。もう」

訳が分からず顔を覆う。

そんな私を司はギュッと抱きしめた。

「これから、相当驚く事があるかもしれない。でもこれだけは言っておく。俺は、佐々木なんかと結婚しないし、この会社だって辞めるつもりも、クビになるつもりもない。そして何より、朱莉を心から愛してる。だから、俺を信じて待ってて」
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