エリート同期は意地悪がお好き
「…これを見なさい」
「・・・」

社長のデスクの上に、書類の束が置かれた。佐々木専務は、無言でそれを手に取り、目を通していく。…そして、どんどん顔を歪ませ、顔が青ざめていく。

…書類の束には、他社との賄賂のやり取り、必要以上の接待、一度だけではあるが、着服まがいの事もしていると言う報告書だった。

「…この事は、黒川部長、貴方もよく御存じのはずだ」
「・・・」

佐々木専務の言葉に逆らえなかった黒川部長も、少なからず手を貸していた。

「佐々木専務、私は貴方を信頼していた。…しかし、信頼は裏切られた」

社長の言葉に、佐々木専務は、下唇をかむ。その横で、父の悪事を知った佐々木希は、今にも泣き出してしまいそうだった。

「貴方方の人事は、おって知らせる・・・この会社には、もう籍はないと思っていただきたい」
「そんな!」

「それだけの事をしたと、お分かりになるでしょう?」
「・・・・」

「私は!…私はどうなるんですか?」

佐々木希が言う。

「…佐々木希さん、確かに貴女は大した罪は犯していない」
「それじゃあ」

「ですが、今回の勝手な人事異動をさせたのは、他の誰でもない、貴女だ」
「・・・」

「一社員でしかない貴女が、人事に首を突っ込んでいいはずがない、そうでしょう?クビにしないでも、本社にはいられないと思ってください」

「・・・」

社長の言葉に、佐々木希は、涙を流した。

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