エリート同期は意地悪がお好き
…また、嫉妬の毎日が戻ってくると思うと、憂鬱な気持ちになるが、朱莉が傍にいてくれるだけで、仕事への意欲が、こんなにも、高まってしまう。

『私にべた惚れなんだね?』

・・・あぁ、その通りだよ。

そう認めると、可笑しくて、少し笑って、俺はまた、外回りへと、出ていく。

「行ってらっしゃい、司」
「…行ってきます」

朱莉に背を向けたまま手を挙げると、俺はオフィスを後にした。

…朱莉が笑っている事など、知らないまま。


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外回りが終わり、オフィスに戻ったのは、午後7時。

ほとんどが帰宅しているか、まだ外回りしているか。

オフィス内は、ガランとしていて、…でも。

一角のデスクで、一人、パソコンと睨めっこしている人物が一人。

俺は何を言うでもなく、黙って、その人の真横まで足を進めた。

「ヒッ!…ビックリさせないでよ、司」
「…まだ、仕事してたのか?」

溜息交じりにそう告げると。

「まさかとは思ってたけど、みんな仕事溜めすぎだよ?やっと10分の一終わったところだよ」

そう言って深い溜息をつく朱莉。
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