エリート同期は意地悪がお好き
「…なんで、そんな事を?」

小さな声で呟く。すると、司はクスリと笑った。

「…最初は、社長の意向だった。親の七光りで、トップに立っても、なんの下積みもないままなんだから、会社が潰れるって…俺もその意見には同感だった。だから、何もかも秘密にして、東城司と言う一人の人として、この会社に入社した。…仕事に集中する筈が、誤算が一つあった」

「…誤算?」

「…斎藤朱莉、君に出逢った事」

…誤算?…私と出逢わなければ良かった。そう言いたいの?

私は何も言えず、司の顔を見つめた。

…すると、司は何時ものような意地悪な笑みを浮かべた。

「…朱莉と言う一人の女性を、心底愛してしまった事」

「…司」

「その子には、俺のありのままを受け入れ、愛してもらいたかった。…それがこうやって叶うとは正直思わなかったけどね。意地悪ばっかしてたし、嫌われてると思ってたから」

…司も、私と同じだったんだね。…私も、司に嫌われてると思ってた。
< 134 / 172 >

この作品をシェア

pagetop