エリート同期は意地悪がお好き
「…あの」

誰ですか?と聞こうとしたけど、それは叶わなかった。

「可愛らしい顔をされてるんですから、貴女には、笑顔が似合いますよ」

…イケメンに可愛らしい何て言われたら、誰でも恥ずかしくなると思う。

私は頬を染め、謎のイケメンを見つめた。

そのセリフを吐いた後、謎のイケメンは、その場を何事もなく去って行った。

「…な、なんなの、あの人?…ぁ」

謎のイケメンは、ハンカチを落として行った。

私は慌ててそれを拾うと、彼を追ったが、もう、どこにも姿はなかった。

「…そんな所で、油売ってるのは、朱莉さんではありませんか」
「…ヒッ…驚かさないでよ、久美」

声をかけてきたのが久美だった事に、安堵の溜息をついた。

「あら?驚かしちゃった?…そのハンカチ、司の?」

…男物のハンカチだ。…司の物と間違えても不思議じゃない。

「え、あ、うん」

…なぜか、拾ったとは言えなくて。

「…司と、あれから話ししたの?」
「…うん、まぁ」

「…あんまり深く考えなくていいんじゃない?」
「…え?」

「…朱莉は、司の事、好きなんでしょう?」
「…うん」

「…まぁ、朱莉が社長夫人とか笑っちゃうけど、変わる必要はないよ。そのままの朱莉が、私は大好きだからさ」
「…久美〜」

「ウワッ!泣かないでよ?キモいから」
「…」

キモいとか失礼な‼︎
そう思いながら、久美を睨むと、久美はフフッと笑った。

「…朱莉苛める司の気持ちがよくわかるわ。可愛いもん朱莉…司はさ、そんな朱莉が好きなんだよ?だから、朱莉もそのままで、司を好きで、いつも笑って傍に居てあげな!」

そう言うと、ヒラヒラと手を振りながら、自分のオフィスに戻って行った。
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