エリート同期は意地悪がお好き
久美の気遣いが嬉しくて、少しだけ、モヤモヤが取れた気がした。

気を取り直して、オフィスに戻り、仕事を始める。

…今日は、定時に仕事が終わりそうだ。

「…朱莉」
「…司。おかえり…今外回りから帰って来たの?」

私の言葉に頷いた。…仕事を始めようとしたが、司が私のデスクから離れないので、再び顔を上げると、司は私の目線まで、しゃがみ込んだ。

「…どうしたの?」
「…今夜はちょっと遅くなる」

「…そう、わかった」
「…これからしばらくはちょっと、そんな日が続きそう」

「…ん?」
「…過労とは言え、もうしばらく入院しろって医者に言われてるから」

…そうか、お父さん、もうしばらくは入院なんだ。

「…心配だね」
「…あぁ。でも、直ぐに元気になるから、それはいいんだけど、社長の決済が溜まってて、その手伝いをしないといけない」

…それを聞いて、初めて実感が湧いた。

…司が、後継者だという事を。
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