エリート同期は意地悪がお好き
「…」

…朱莉はまだ、スーツのままだった。

家事をこなして、一休みするだけのはずが、疲れて眠ってしまったんだろう。

…そんな朱莉を優しく抱きしめると、嗅ぎ慣れない香りが漂ってきた。

満員電車に揺られて帰ってくる。…誰かの香水が移ってもおかしくはない。

…だが、その香りは、一般に売られている香水の香りではなかった。

…ブランド物の男物のハンカチ。

…そして、高級そうな香水の香り。

俺と離れて、数時間の間に、一体何があった?

「…ん?…あれ、…私、寝ちゃった?ごめん、抱きついちゃって」

少し頬を染め、俺から離れようとした朱莉を、俺はぎゅっと抱きしめた。

「…司?」
「…もう少し、このまま」

俺の言葉に、クスッと笑って、朱莉は俺を抱きしめた。
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