エリート同期は意地悪がお好き
…こうやって抱きしめていたら、この香りも無くなるだろう。

…でも、なかなか離さない俺を不思議がって、朱莉から少し体を離した。

「…どうしたの?…会社でなんかあった?」

「…俺じゃない」
「…え?」

俺の言葉に、目をパチクリさせた朱莉。本人はなんにもわかっていない様子。

「…今日さ、デスクの上に、男物のハンカチがあった」
「あ〜、うん。それが?」

「…誰の?」
「落とし物を拾ってちゃんと返したよ」

そう言ってニコッと笑った朱莉。

「…じゃあ、この香りは?」
「…香り?」

朱莉のスーツを掴むと、朱莉は何度も匂いを嗅いでいる。…だが、わかっていない。でもまぁ、俺が長い事抱きしめてたんだから、匂いもほぼなくなってる。

「…誰かに、抱き締められた?」
「…へ?」

俺の言葉に、キョトンとする。

「…そうじゃなきゃ、移香なんてしない」
「…うーん……あ!」

何かを思い出したように手を叩いた。
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