エリート同期は意地悪がお好き
「今日の帰りに、ナンパに合っちゃって…」

…ナンパだ⁈

俺は思わず顔をしかめる。すると朱莉は肩をすくめた。

「あ、でもね、通りすがりの人が助けてくれて!それがまさか、私が拾ったハンカチの張本人で…」

こんな偶然もあるんだね〜、なんて、呑気に言う朱莉。

「…そいつ、どこの部署?」
「…え?…あ〜…」

その問いに、朱莉は困ったように、頬をポリポリとかいた。

「…どこの部署かって聞いてんだけど?」
「…違うの」
「…何が違うんだよ?」

「…うちの会社のひとじゃないの」
「…は?」

「まぁまぁ、いいじゃん!もう、会う事もないだろうし」

何て言いながら、うんうんと頷いて、1人納得している朱莉。

「…全然良くないんだけど?誰だよ、そいつ!」

「…うちの会社の取引先だよ。黒澤さんて人」

…黒澤?…クロサワ?…黒澤⁈

「…まさか、あの、黒澤優か⁈」
「黒澤…優?…あ、そうみたい」

ポケットから、朱莉は名刺を取り出してそう言った。
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