エリート同期は意地悪がお好き
仕事を終えたのは、午後7時。

帰り仕度をしていると、誰もいなくなった筈のオフィスに足音がして、そちらに視線を向けた。

「…仕事用のスーツにしては、改まったスーツだね…司」
「…ん、ちょっと、これから急用が出来て」
「…そっか、…帰りは遅くなりそう?」

「…そうだな」
「わかった。じゃあ、私、帰るから」

そう言って帰ろうとすると、司が私の手を掴んだ。

「…どうしたの?」
「…あのさ」

「…何?」
「急で悪いんだけど、朱莉も付き合ってくれないか?」

…急用に?…私が?

私で役に立つならと、司と一緒に、タクシーに乗り込んだ。

…ついたところは、ブランド店。

「ここに、急用?」
「…いや、その前に、その仕事用のスーツを、ドレスに代えてもらわないと行けないんだ」

「…どこ行くの?」
「…あ〜うん、…社長の代理で、取引先のパーティーに」

その言葉に驚き、目を見開いた。

「…何で、私まで?」
「…女性同伴でお願いしますって言われて…」

「…私でいいの??」
「…朱莉じゃないと意味がないんだ」
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