エリート同期は意地悪がお好き
「…そんなに不安そうな顔をしなくても、取引を取り止めたりしませんよ」

その言葉に、ビクッとなり、慌てて振り返る。

「…今夜の貴女はとても綺麗だ。それに免じて、あっかんべーは、許してあげますよ」

そう言いながら、私の目の前まで来た黒澤社長は、怯える私の頬に触れた。

…逃げようにも、手すりと黒澤社長の間に挟まれて身動きが取れない。

「…さ、触らないで」
「…さっきまでの勢いはどこに行ったんです?」

「…」

なんの抵抗もできない私は、ただ、黒澤社長を睨むしかなくて。

「…そんな可愛らしい顔で睨んでも、ちっとも怖くないですよ」

「…何やってやがる!」

…その声を聞いただけで、安心して、涙が溢れる。

「…朱莉」

私の泣き顔を見た司は、黒澤社長に近づくなり、思いっきり殴り飛ばした。

「…朱莉は優には渡さないって言ったはずだ」

「…えぇ、言いましたよ。…司、私に勝ちたいなら、表舞台に上がってもらいましょうか?」

「どういう意味だよ?」

「TOUJOUの社長になれと言ってるんです。そして、彼女を司の奥さんにして、私を負かして見てくださいよ」

「…あぁ、なってやるよ!優なんて、簡単に負かす自信はある」

…すごい展開になっているような気がするのは、私だけだろうか?
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