エリート同期は意地悪がお好き
会社の最寄駅で降りた私たちは、ここから別行動をとる。

司は気にしないって言ったけど、私が気にする。

司と恋人同士に間違われたくはない。恋人にするなら、とびきり甘くて優しい人がいい。

司とは正反対な性格のイケメンの男がいい。

…司も十分イケメンではあるけれど。

数歩先を行く司を見つめる。

180㎝の長身、抱きしめられて知った細マッチョな体型。髪は染めていないのに、色素が薄いのか?ほんのり茶色い髪。男にしては大きな目に二重。鼻筋が通っていて、一歩間違えれば、芸能人にもなれる容姿をしている。

…会社に着き、ロビーにあるエレベーター。私は司とは違うエレベーターに乗り込み、営業部に向かった。

エレベーターが階に着き、降りた瞬間、目の前で私を待ち構える人物が一人。

「ちょっと!朱莉、アンタ無事だったんだね」
「ワッ!…ビックリした。どうしたの藪から棒に?」

私に詰め寄ったのは、同期の、中村久美だ。同じ年だけど、私を妹のように可愛がってくれる姉御肌の久美。

「どうしたのじゃないわよ。火事だったんでしょ?今どこにいるの?私んちでよければおいで、歓迎する」

・・・その言葉に、私は苦笑い。…だって、久美は、もうすぐ結婚を控えている。佐々木清治という婚約者と同棲中なのだ。そんな家に転がり込む事だけは避けたい。

「…ありがとう、大丈夫、と・・・友達が、次が決まるまで住んでいいって言ってくれてて」
「…誰?」

…司。なんて言えるはずもなく。

「…別の会社の子。…大学の時の友達」

…と嘘をつかなくてはいけなくなった。…ゴメン、久美。
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