エリート同期は意地悪がお好き
・・・散々愚痴りながら、朱莉はパソコン操作を続ける。そんな朱莉を尻目に、俺は自分の仕事を淡々とこなしていく。

珍しく定時に仕事を終えた俺は、朱莉の下へ。

「…仕事終わった?」

俺の問いが気に入らなかったのか、再び俺を睨んだ。

「…誰かさんのおかげで、全然仕事が終わらないの。今日は帰りが遅くなるから、勝手に何でも自分で食べて」

ふて腐れたまま朱莉がボヤく。そして、誰にも気づかれないように、俺に家のカードキーを渡した。

だけど、そのカードキーを、朱莉に突き返す。

勿論朱莉は怪訝な顔をする。

「もう仕事は終わったんでしょ?とっとと、お帰り下さい」
「いいよ、終わるまで待ってるから」

「…待ってても、夕飯なんて作んないからね」

小さい声で言う朱莉。怒ってるつもりなんだろうけど、小声で言われても、凄味に欠けるな。

「作れなんて言ってない。…食べて帰ればいい」
「・・・?!」

思ってもみなかった言葉だったんだろう。朱莉は目を見開いて俺を見る。

…これでもちょっとは反省してるつもりなんだ。仕事を押し付けすぎたかなって。

しばらくの沈黙の後、朱莉がポツリと呟いた。


「・・・奢りなら付き合ってあげる」
「・・・はいはい。…これ少し貰ってく」

書類の束を半分、朱莉のデスクから奪うと、自分のデスクに着いた。
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