エリート同期は意地悪がお好き
それからまた、外回りに行っていた俺は、陽も傾いた夕方、やっとオフィスに戻って来た。

…中に入るなり、朱莉の笑顔が目に飛び込んで来た。あの笑顔は、本当に癒される。

…だが、それが、他の男に向けられると、嫉妬で狂いそうになる。

…朱莉は普段から笑顔を絶やさない。営業で疲れて帰ってくる同僚達を笑顔で迎えたいと前に聞いた事がある。

だから、嫉妬なんて、お門違いなのに、どうしてもそうなってしまう。

「…ぁ、おかえりなさい。お疲れ様でした」

話の最中、俺が帰ってきた事に気づいた朱莉が俺に向かって、満面の笑みを浮かべそう言った。

…その笑顔が、俺に向けられただけで、安心してしまう。

「…ただいま」

そう言って、微笑むと、朱莉は突然気恥ずかしそうに、そっぽを向いてしまった。

…なぜ?
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