エリート同期は意地悪がお好き
「朱莉」
「・・・ん?」

「司が、何時から朱莉の事好きだったか知ってる?」
「・・・ううん」

前から好きだった的な事は言われたけど、それがいつからなのか、私は知らない。

「入社して、配属場所が決まった、その時だって言ったら、朱莉は驚くかな?」
「…ぇ?…エ~?!ウソ?!そんなに前から?って言うか、その頃、同期と言っても、最初だから、司と話しなんてほとんどした事なかったよ?」

…実際、仕事を覚える事が忙しくて、いつ誰とどんな感じで話したとか、覚えてなどいない。

「入社した時には、私はもう、ダーリンと付き合ってたし、司ともよく話してたんだけどさ。その時、朱莉の話しが出たの」

「・・・」

「どんなに忙しくても、パソコンに集中してても、営業から帰ってくると、必ず、お帰りって言ってくれるって」
「・・・」

…確かに。私は、みんなの疲れが少しでも取らるならって思って、『お帰り』と、必ず声をかけるようにしていた。

外回りはしないし、事務ばかりで、みんなの役に立てることが少ないと感じていたから、それくらい大したことじゃないと。

「まぁ、その時は、司本人は気づいてなかったみたいだけどね、自分の気持ち。…でも、朱莉の事話すときの司の顔ったら」

そう言うと、久美はクスクスと笑いだす。私は想像もつかないので首を傾げる。

「顔がゆるんじゃってね?あ~可笑しい!ぁ、コイツ、絶対朱莉の事好きなんだって思ったよ。その後なんて、直ぐに朱莉に意地悪しだしたし、決定的だなって、ダーリンと話してたの。で、ダーリンが、お前、朱莉の事、好きだろって言って、初めて自分の気持ちに気付いたの。そこまでしないと気付かない司も司だけどね。まぁ、司も、エリート街道まっしぐらで、仕事ばっかりだったから、色恋沙汰には疎いのかもしれないけど」

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