エリート同期は意地悪がお好き
「…おい、行くぞ」
「…これくらい、一人で運べるから」

俺の後ろをついて来ながら、朱莉が言う。俺は澄ました顔で先々進んでいく。

「…今一番牽制しておきたい奴がいるから行くんだよ」
「…牽制しておきたい奴?」

俺の言葉に首をかしげる朱莉。

人事部の前、ピタリと足を止めた俺は、朱莉を見下ろした。

「…司?」
「…大丈夫。俺に全部任せとけ」

そう言ってニッと笑ってみせると、朱莉はフニャッと柔らかい笑みを浮かべた。

…やっぱ可愛いわ。と、改めて思ってしまった。

今日から、ここが朱莉のオフィスになる。…男女半々ってところか。

俺は、朱莉を先に中に入らせる。そして後ろから、荷物を抱えついていく。

「…おはようございます。斎藤さん。これからよろしくお願いしますね」

…一番に声をかけてきたのは、勿論牽制すべき相手。
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