おわりの音が響いた
鈴の音を聞いた
それは悲劇か、幸運か。
八十年間閉ざされた重い鉄の扉が開き、中から囚われたモノが出てきた。
手首についた重い鎖は外され、逃げださぬようにとした鎖は切られた。
冷たい鉄格子は開き、固い鉄の床から解放された。
ただ、その存在の脅威ゆえか、両の足首には鈴がつけられた。
居場所を知らせる為に。
“それ”は初めて大地の空気を吸い込んだ。
“それ”が初めて土を踏む時、皆が恐怖で息を止めた。
空を仰ぐ姿、呼吸音、大地を踏む音、動作全てに皆が注目した。
厳重な警備の牢獄から出た“それ”に傅くモノが一人。
「永遠の服従を。我が主」
傅く従順なる僕(しもべ)たる青年に、憐れみの目が向けられた。
随分若い青年の名は、トガ・クレノ。
囚われのモノは深く息を吸い込んだ。
「我に力を」
「御心のままに」
差し出された右手に信頼と忠誠の口づけが落ちたその時、周囲の者は皆頭を垂れた。
「「御心のままに、我が主」」