おわりの音が響いた
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「兄様、お変わりありませんか?」
コトワリの住む城につくのに一か月もかかってしまった。
鬼の足で一か月なのだから人の足では一年程かかる距離であろう。
歩くという手段しかないことに不満はあるが、それを口に出すのはトギしかいなかった。
やっとの思いで城についたが、湯浴みや衣装替えなど見目を整えるのに時間を取られ随分と時間がかかってしまった。
城の一室、二人の接見のために用意された小さな部屋にコトワリはいた。
「セツナ、無事について何よりだ」
「わたくしのことなどいいのです」
会ったことのないはずの二人であった。
この場にいることを許されたのはトギとクレノのみ。
テンは外で待っている。
顔を見合わせるトギとクレノであるが、それには構わずセツナがはしゃぐ様に言う。
「兄様、わたくしは恐ろしくて堪らないのです。兄様が何者かに狙われているということを耳にしてから、目を閉じるのも痛いのです」
コトワリの足元に膝をつき、頭をなでられるセツナの姿など想像できなかった。
その驚きの姿にクレノもトギも何も言わない。