おわりの音が響いた
「戯れの言葉です、お情けを」
クレノがセツナの前に出て、話しかけてきた男に言った。
「獣の分際で人間に口を利くな。三人目に聞いているのだ」
傲慢な態度にトギが口笛を吹いた。
「ふーん、人って言うのは噂通り勝手な生き物だな」
「なんだと、貴様王を侮辱する気か」
「俺が侮辱したのは王じゃなくあんただよ」
男の眉間に深いシワが出来た。
「随分な口をきくんだな、従者のくせに。三人目の立場が分かっていての発言か」
「従者でなく剣士だ」
「獣が人のまねごととは笑わせる。その爪でひっかく方が獣にはお似合いじゃないのか」
「望み通りにしてやろうか肉の塊が」
睨みあう両者に、セツナが割って入った。
「わたくしが出向いた理由は一つ。人の王との接見。ここで無駄な争いをしても何も生まれない。トギ、お前様はわたくしの命ずるままに剣をふるう騎士であることを忘れるな。愚かな人の子よ、鬼に剣一つと人数で叶うと本気で思えば村が一つ消える、ここは手を引きなさい」
両者の腰にさした剣の柄に触れ、セツナは下がれと小さな声でつぶやいた。