おわりの音が響いた
「世間話をする気はない。そちらが敵か味方か。それだけを知ればよいのです」
玉座から立ち上がった王が両手を広げた。
「ワシは人の世を総べる王。ワシにはわからんよ殺し合う兄弟の真意が」
これだから獣はと吐き捨てて、人の王はセツナを指さした。
「主に無礼です」
脇に控えるクレノの訴えに指を見て王がにやけた。
「鬼でも非礼を気にするのか。無駄に知性があるというのも厄介だな。ワシの願いは一つ、サダメ王を王位につけること。そなたはどう貢献できるか知りたい」
「人はどれだけの時間を生きるのです?わたくしは生まれて八十年、一度も外を見ず触れず何一つ感じずに生きてきました。恐らくあなた様よりも長い間固い鉄の塊に囲まれ生きてきました。そんなわたくしが外に出たのはこの争いの為。これが終わればまた牢へもどります。そんなわたくしが安易に決断を出すとお思いでございますか?」
強い意志の瞳に、王は眉を引くつかせた。
「噂によると現王と親密であると聞くが」
「お慕いしておりますが」
「忘れるな、こちらはサダメ王の‶秘密”を握っている」
微かな変化に、傍についていたクレノだけが気づいた。
微かな目の見開き、明らかな動揺に王は核心をついたと笑む。