おわりの音が響いた
2 鬼である
「…兄様(あにさま)が?」
驚きの声を上げたセツナは長い服の裾で口元を慌てて隠した。
荒れた地を裸足で踏むのに抵抗がないのは鬼であるからかなのかは不明である。
兄コトワリとサダメの対立、今の世の理を従僕クレノから聞かされるセツナは驚きを隠せずにいた。
思い返せば生まれて八十年、一度も外の世界を知らずに過ごしてきた。
人と違う時を生きる鬼であるからこそ、八十年など生ぬるくまだまだ鬼の世界で言えばセツナは若かった。
心中痛み入りますと気遣ってからクレノの話は続く。
それでもまだ、セツナは二人の対立が信じられなかった。
「…それで?わたくしはなぜ暗い檻の中から引きずり出され太陽の下に晒されることになったので?」
「それは…センノ一族より二人の仲裁役を」
「十年という歳月をかけても収まらぬ争いに今更わたくしが出てきたところで変わるまい。お前、隠し事はよろしくないであろう?」
立ち止まり先を聞くまでは進まないとセツナはクレノを見据えた。
「…殺してほしいとのことです」