『短編』恋する街角
 


電車の中、歓声が起こる。


そのまま、彼はわたしを抱きしめた。


『恥ずかしかったらこのまま、次の駅まで顔を隠しておけばいいよ。』


彼は小さくわたしに言った。





一突然の出来事に、今にも力が抜けそうなわたしの体を、彼はしっかりと抱きしめる。


早鐘のように打つわたしの心臓が痛くて、わたしは彼にしがみついた。


『やったな!』


『おめでとう!』


たくさんの冷やかしの声の中、電車は次の駅に着いた。


彼は冷やかしの声に笑顔で手を振ると、庇うようにわたしの肩を抱いて、わたしを電車から降ろしてくれた。


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