『短編』恋する街角
 


『鼻、ついてる。』


風がわたしの髪をさらりと舞い上げた時、声が聞こえた。


髪の毛を押さえながら、わたしは声のほうへ振り返る。



その男の人は、すれ違いざまにそう言うと、わたしに向かって軽く舌を出した。



…その男の人を包むように、街が、輝き出す。


舞い上がった髪がスローモーションのように、わたしの頬を撫でた。


きらきら輝く街を行く、その男の人の後ろ姿をわたしは呆然と見つめていた。


『彩?』


由香里がわたしの顔を覗き込んだ。



そして、吹き出して言った。


『彩、鼻んとこ、アイスついてる…。』


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